【Virtual Beingsインタビュー#05】VR建築家 番匠カンナさん(banjokanna)・マル知る!



VR方面で活動されている方をご紹介するシリーズのこちらの記事

【Virtual Beingsインタビュー】合同VR作品展示ワールド「Beyond Reality」

にて合同VR作品展示ワールド「Beyond Reality」を紹介いたしました。


記事内で「Beyond Reality」の会場設計を担当されている番匠カンナさんをご紹介いたしました。

今回は番匠カンナさんにVR建築家としての活動についてインタビューさせていただきました。



番匠カンナさん

twitter:@Banjo_Kanna

VRChat:banjokanna

ホームページ:番匠カンナ バーチャル建築設計事務所

制作ワールド一覧はこちら――VRChatの世界(β)から引用

YouTubeチャンネル:「Banjo Kanna Channel」

BOOTHショップ:「Banjo Kanna Channel」




――本日は番匠カンナさんが作られたワールドを回りながら、VR建築についてお話をうかがせていただきたく思います。よろしくお願いいたします。


番匠カンナさんよろしくお願いいたします。


■Visionnaire「ニュートン記念堂」



・番匠カンナさんが最初に作ったワールドで待ち合わせ。18世紀の建築家が残した建築案をVRで再現したワールドです。入り口の解説とドローイング(設計イメージ図)を突き抜けて入場するのがとてもVR。


――こちらのワールドは、入り口の解説文にあった通り「幻視の建築家(Visionnaire)」と呼ばれたエティエンヌ・ルイ・ブーレーという建築家が設計した建物のうちのひとつをVR内で作ったものなんですね。


番匠カンナさんはい、これは「ニュートン記念堂」というものです。


――このニュートン記念堂は、設計はされたものの、実際には作られなかったとのことですが。


番匠カンナさんそうです、作られなかった建物です。建築用語でアンビルトというのですけれど。


――実作に作られなかった、というのが素人の私にも分かります。大きすぎるような・・・作られなかったのも当たり前というか。


番匠カンナさんそうです、当たり前ですね。そもそも建築できるつもりで設計を描いていないんです(笑)




・遠景に見えるなんだか丸く可愛らしい建物。ですが歩いていくと次第に分かってきます。なかなか到着しません。あまりに建物が大きいのです。


――そうなんですか。それで幻視の建築家と呼ばれているんですね。


番匠カンナさん18世紀の時代にこのスケールですから。


――正面のトンネルを抜けると、中は巨大な球体がまるまる吹き抜けの構造なんですね! 内部の詳細は設計図では確認しきれないと思うのですが、番匠カンナさんがデザインを補足したんでしょうか。


番匠カンナさんはい。細部は私が整えました。ベンチが設置されていたり、床のデザインなどです。1Fの中央にピラミッド型の台があったり、上から球体が吊られているのは図から分かるのですが、詳細は分かりませんので。


――1F中央のオブジェクトを上階へのテレポーターにしてあるのは、まさにVRですし、デザインのセンスですね。


番匠カンナさん床に配置してある図も、このニュートン記念堂のデザイン図、ドローイングです。建物の球体を半分に切った内部の図ですね。下のピラミッド型のところに今私たちはいます。ピラミッドの上には祭壇のようなものがあります。ニュートンが亡くなった折に記念で設計されたものなので、そういう墓碑的なものかもしれません。


――詳しくは分からないんですね。そしてよく見ると人影も描いてありますね。すごいスケール感です。





・この内部構造図の中央下の部分にいま番匠カンナさんと記者が立っています。


――そして1F中央から2Fへ移動できるんですね。2Fは一面に透明の床が設置されています。これはVRならではの表現ですね。


番匠カンナさん外周にはエティエンヌ・ルイ・ブーレーのドローイング(設計イメージ図)を配置しました。ちょっと見てみましょうか。


――ドローイングの前にタイトルが。「王立図書館」


番匠カンナさんとりあえずどれもとんでもなくデカイんですね。




・透明な床で巨大な球体の中空を歩くのは現実ではまず設計できないVRな体験なので、現実ではまず作ることが出来ないこのニュートン記念堂と意味を同じくする設計なのがエモさを感じます。
そして2Fに配置されたエティエンヌ・ルイ・ブーレーのドローイングは誰が見てもどれも面白いものばかりです。ぜひご来場してご確認を。


――本当だ、人が小さい!途方もないスケールですね。


番匠カンナさんめちゃくちゃデカくて、荘厳で、まあ実現はしないよねというものです。


――当時の技術では不可能ですよね。


番匠カンナさん技術もですし、いくら費用をかけるのという。こっちの「大聖堂」はもっととんでもないですよ。見てください人のサイズ(笑)


――ちょっとどれだけの広さの空間か分かりませんね・・・



・この場の多数のドローイングを番匠カンナさんに解説・紹介していただくだけで記事が2、3本作れそうです。


番匠カンナさんニュートン記念堂のドローイングがこれですね。これを参考にそれっぽいワールドを作りました。


――描かれている人間や木のサイズから、建物の寸法も推測して合わせてあるんですね。


番匠カンナさんちなみにニュートン記念堂のドローイングはもうひとつあって、それぞれ別の設計案なんです。


――こちらは中央に球体が吊られておらず、プラネタリウムのようですね。


番匠カンナさんどちらも球体の内側に星空を作りたい、というアイデアだと思うんです。1つ目の案は、アストロラーベという球体から、どういう原理かは分からないんですが光を照射してプラネタリウムの様にしようという案のようです。


――どう照射するかは分からない(笑)




・謎のプラネタリウム技術で星空を投影するんだよ、という案に対して、もう一方は一見地味ですが・・・


番匠カンナさんこちらの案はもっとトンデモなくて、断面図のところに線が入っているのが分かるでしょうか?


――あ、確かに溝?みたいなものが描かれていますね。


番匠カンナさんこれ、全部、です。星の位置に穴を空けて外光を取り込んで光らせようという・・・


――あー!(笑)


番匠カンナさん星の数だけ星の配置の通りに穴を空けるという常軌を逸した発想です(笑)



・謎の妄想技術でなく力技で実現しようという感じが逆にトンデモさが際立つ設計案です。エティエンヌ・ルイ・ブーレー恐るべし。


――今回VR化するにあたって、アストロラーベを配置し、内壁はプラネタリウムの様にする折衷案みたいな形をとっているんですね。


番匠カンナさんでは3Fへ上がりましょう。アストロラーベ案のドローイングの前から上がれます。




――巨大で美しいですね。ここがちょうど球体の中央部分になるんですね。周囲にボールが配置されていますがこれは?掴んで投げると尾を引いて飛んでいき、そして戻ってくるんですね。


番匠カンナさんこれはブタジエンC4H6さん(@butadiene121)に作ってもらいました。最初はなかったんですけど、今こうゆうワールドを作っていると言ったら、こういうもの作ってるといって見せてくれたんです。で、お願いしたら快くくれた(笑)


――VRで創作活動をされている方は情報交換やコラボが本当に活発ですね。


・素敵オブジェクトの制作者、ブタジエンC4H6さんはこちらの記事【Virtual Beingsインタビュー】月刊エモいワールド制作者 落雷さん(rakurai5)にも、空飛ぶ箒ギミックやパーティクル桜の木の制作者としてお名前が登場しています。


■VRを始めたきっかけはミライアカリのVRChat回

――「Visionnaire」を解説していただき、サムネイル用の素敵な画像も撮れたところで、番匠カンナさんのVRクリエイターとしての活動をお聞きしたいと思います。VR建築家という珍しい肩書なのですが、やはりプロの建築関連の方なのでしょうか。


番匠カンナさんはい。建築の設計の仕事をしていました。2018年の秋にフリーランスになりましたが。


――やはりプロの方なんですね。そうすると元々、3Dモデリングなどに近しい世界の方だと思うのですが、VRシステムやVRChatはいつ頃から触れられたのでしょうか。


番匠カンナさん2018年の4月です。


――VRやVRChatを知って、触れてみようと思ったきっかけはどのような。


番匠カンナさん同じような方が多いと思うんですが、2017年の年末のVtuberがばっと流行したタイミングでVRに興味を持ちました。最初は友人に輝夜月を教えられて見て、同時にねこます氏を見て、面白かったので続いてミライアカリちゃんを見て。で、ミライアカリちゃんはVRChatに遊びに行くという動画があったんですよ。


――そうですね、初期のころVRChatに行く回がありました。


番匠カンナさんそれを見て、なんというか同じ場所に複数人がいて会話をしていて、中には踊っていてそれを見ていて盛り上がっている人達もいたりして、これはもう「空間」じゃん、と思って。これはヤバいぞと感じたのがきっかけですね。


――私は、幾人かのVRを触っている方にお話を伺ったことがあるのですが、VRを見た感想が「空間じゃん」という方は初めてでして。この「空間じゃん」というのはどういった意味なのでしょうか。


番匠カンナさん人が複数人いて、生活しているところが大事です。


――生活している?


番匠カンナさんただ3Dモデルを作って、VRで一人で視聴する体験とは違うんです。VRChatを知る前に「Tilt Brush」を体験したことはあったんですが、その時にはVRChatを見た時のような感動はなかったんです。


――ひとりでの体験は違うんですか。


番匠カンナさん人がそこで生活している周りの空間全部、それを作れるということが「空間じゃん」ということです。私にとって。


――3Dモデリングで作られた空間があって、それをHMDで没入感を感じられる、というだけとは違うんですね。そこに複数の人がいて、交流していて、生活している。それが魅力なんですね。


番匠カンナさんそうですそうです。


――なるほど。ちょっと意外でした。建築のプロの方なので、現実では出来ない建築物が自由に作れる、といったこととかに魅力を覚えていらっしゃるのかななどと想像していました。作るのは建築物ではなくて、空間なんですね。


番匠カンナさん同じようなポイントに感動を覚える人がそんなに多くいるかは分からないんですけれども、でもリアルの建築も同じなんです。ただ箱を作っているんではなくて、そこに人がいる、人が使うという空間を作ることなので。なのでこれはもう一緒だなと思ったんです。


・Vtuberの動画でVRChatを見てVRChatを始めるというすごくダイレクトなVR開始のエピソード。


■建築の3DモデリングとVRChatの3Dモデリングは違う

――VTuberのVRChat動画がきっかけでVRに強く興味をお持ちになられた。となると早速VRシステムを購入されたのでしょうか。


番匠カンナさんはい。すぐにVIVEを購入しました。デスクトップモードという発想はありませんでした。


――プロの建築の方ですから、3DモデリングやCADを扱われていたと思うので、最初からVRのモデリングもお手の物だったのでしょうか。


番匠カンナさんモデリングなんですが、建築ですと最近はRhinoceros(ライノセラス)というソフトがよく使われるんです。この建築で使うモデリングと、こっちのVR制作のモデリングはやり方が全然違うので、全然分からなかったです。


――そうなんですか!


番匠カンナさんBlenderなどのポリゴンモデリングと考え方が全然違うもので。建築のほうは、柱なら柱、床なら床のボックスを作ってそれを組み合わせていく。マテリアルもそれぞれに1つ1つ貼っていくから、UV展開がなかったりとか。建築のなかにいた時にそういうことを話していた人はいませんでした。方法が最初はまったく分かりませんでした。


――3Dモデリングでも用途が違うと別モノなんですね。


番匠カンナさんRhinocerosは、建築以外でも産業用やジュエリーデザインなどでよく使われているようです。


■まずはアバターがないと落ち着かない

――意外にも別物だった3Dモデリングですが、まず最初に作られたのはやはりアバターでしょうか。


番匠カンナさんはい、アバターです。VIVEを買って、仕事をサボって(笑)まずは自分を作りました。今のアバターは最近作った髪の色の違うバージョンです。


――金髪のこちらのバージョンが最初に作られたアバターなんですね。




番匠カンナさん顔はニコニ立体ちゃん(アリシア・ソリッドちゃん)をベースに使っています。改変勢ということになりますね。


――その時に使った3Dモデリングソフトは、やはりVRChatユーザーが大好きな・・・


番匠カンナさんはい、Blenderです。建築の3Dモデリングソフトにはボーンやリギングといったものがないので。初めてやってうわあぁぁ、みたいな。


――やはり苦戦されましたか。


番匠カンナさん苦戦しましたよ~ なのでフルスクラッチは無理だろうと判断して、既にあるもののデータを見ながらやったほうが工程が分かるだろうな、と思って改変することにしました。


――しかしソフトウェアの使い勝手が違うとしても、工数と上手いやり方の目算を立ててあたられるあたりは手慣れている感じですね。


番匠カンナさんいやあ、ほんとに知らないとこれはできないと思ったんです(笑)


――VIVEを購入されたのが2018年4月。まずはデフォルトのアバターでワールドを周ったり、フレンドを増やしたりされたのでしょうか。


番匠カンナさんいや、ほとんどしなかったですね。アバターが出来ないと始められない勢でした。


――こう、アイデンティティを確立しないと、みたいな感覚ですね。


番匠カンナさんそうです。ほかにも同じ感覚の人はいると思います。まず自分を作らないと、みたいな謎ルールです。最初はニコニ立体ちゃんをそのままアップロードしました。それと同時期に、ネット上にあったアンコールワットの3Dモデルを自作ワールドにアップしたりもしました。


――ワールドのアップロードも即試されていたんですね。アンコールワットのモデルがあったんですね。


番匠カンナさんフリーで探して。アンコールワットが好きだったんで、VRで自分がそこに入れるならやってみたいなと。


――ワールドのアップロードを試したりしながら、モデル改変を完成させたのはいつ頃だったのでしょうか。


番匠カンナさん4月末か5月頭くらいだったかなと。


・近しいスキルを必要される業界のプロも困惑させるさすがBlender。きっとVRChatユーザーはみんなBlenderがダイスキデダイキライ。


■VRのあるヤバイ時代

――そしてそのあとにこの「Visionnaire」の制作ですね。こちらの制作はどれくらいの期間がかかったのでしょうか。


番匠カンナさんこれは、いつだったかな・・・全然覚えてないです(笑)


――制作期間もうろ覚えなのですか(笑)しかしかなり手間がかかりそうなイメージですが。


番匠カンナさんでもこれもベースにフリーのモデルがありまして。探したら見つかって、それをベースにしています。かなり手は加えていますが。まったくテクスチャなどはない状態だったので。


――VRに空間に魅力を感じたので、自作ワールドを作ってみようとなった訳ですが、そこでニュートン記念堂を選ばれたのはエティエンヌ・ルイ・ブーレーのファンだったからでしょうか。


番匠カンナさんいや、そこまでファンという訳ではないんですが。先ほども言いましたが、作られなかった建物のことを建築業界ではアンビルトと言います。例えば、最近のものでは新国立競技場です。ザハ・ハディドという建築家の案が変更されてしまいました。こういう建築計画が頓挫してこの世に生まれなかったものもアンビルトと呼ばれます。そしてこのニュートン記念堂のようにそもそも実際に建築する気はなく、その発想がドローイングで後世に残っているものなどです。


――色々なパターンのアンビルトがあるんですね。


番匠カンナさんせっかくVRだったら建たなかったものが建てられるじゃないかということで、アンビルトの作品を実現してみたいな、と思ったのがこれを選んだきっかけです。


――VRであることに意義があるというか。土地も建築工法も建築コストも現実では出来ないことができますからね。


番匠カンナさんそうですね。しかもひとりで出来ていますからね。


――ちなみに18世紀の建築作家、エティエンヌ・ルイ・ブーレーが、VRのある現代に来たら大喜びするんですかねえ。


番匠カンナさんいやあ、なんというか申し訳ないですよね。私のほうが体験しちゃっている。本人には脳内にしかなかったものを。


――現代人には3Dモデリングなどのツールがあるのに対して、18世紀になにも環境がないのに妄想で絵を描いてしまうのはすごいですね。


番匠カンナさん情熱ですね。


――こういったアンビルトは、作ることは出来なかったり作られなかったりしたものですが、建築史では軽んじられずに残っているものなんですね。


番匠カンナさんそうですね。その時代になかったまったく新しい考え方を生み出すのも建築家の役割ですので。そういったものはドローイングで残ります。


――そうものが具現化できてしまう時代なんですね、今は。


番匠カンナさんヤバイ時代ですねえ(笑)


・申し訳ない。


■Table of Nuclides「立体核図表VR」



――そして番匠カンナさんは、次に「立体核図表VR」というワールドを制作されることになるんですね。こちらはどういった発想から生まれたものなのでしょうか。


番匠カンナさん「Visionnaire」を作って、建たなかったアンビルトを作るということは出来たんですね。さらに今後増えると思うのが、地方の産業遺産などを取り壊す際にVRで保存する、いう事例がでてきていうようで。当たり前になっていくので。なのでこれを作って、これはもう当たり前だなあと思って。


――当たり前!


番匠カンナさんそれができるのは分かっちゃったから、次はもうちょっと違うことがやりたいなと思って。そして次は学問みたいなものを空間にできないかなと思ったんですよ。元々空間でないものをみんな入れる空間にしたら面白いのではないかと思って。


――空間でないものを空間にする。


番匠カンナさんちょうど、VRアカデミアという集まりに入っていたので、そこで案を募集したんですね。そうしたら「立体核図表を歩きたいです」と訳の分からないことを言う方がいて。


――立体核図表がなんなのか言葉を聞いても分かりません。


番匠カンナさん私も知らなかったので調べてみたら、すごく面白い図表だったのでこれやる!と(笑)


――かなり複雑な図になりそうなんですが。


番匠カンナさん案を募ったその日のうちに立体核図表のアイデアがでて、それから3日後には3Dモデルは完成していました。


――3日で作ったんですか!


番匠カンナさん本当の原子核物理学の人からエクセルでデータを貰って。このデータを建築でよく使われる3Dソフトのほうで活用する、といったアプローチで作りました。










こちらの「立体核図表VR」はとても多くの方が関わって作られています。

VRChatでの制作活動は、その意義や革新性とは裏腹に、認知がVRChat界隈のなかだけで留まりがちです。

そこで番匠カンナさんは「立体核図表VR」制作の経緯をご自身のnoteにまとめられています。

VRアカデミアのDiscordでのやり取りなども掲載されており、大変面白くわかりやすいため「立体核図表VR」についてはこちらのnoteをぜひご覧ください。


■「立体核図表VR」のnoteはこちらから■


さらにこのまとめを見た科学方面の方からお声がかかり、科学シンポジウムでの登壇をされました。


2019年3月2日開催

見える化シンポジウム2019 バーチャルでリアルを超えろ  ~難解サイエンスを映像で感覚的につたえる~




しかも生身ではなく、VRで「番匠カンナ」が登壇するという形でした。


これが2019年です。



■VR Architecture Contest 00「第0回VR建築コンテスト」


・こちらはコンテストのポスター。ワールドに入ってすぐの場所にも大きく掲示されています。


――さらに番匠カンナさんは「第0回VR建築コンテスト」を開催されています。


番匠カンナさん2018年の10月末から11月末に出展を募集して、12月にコンテスト結果発表を行いました。


――多くの参加者の方から作品が集まり、素晴らしい企画でした!


番匠カンナさんありがとうございます。


――VR建築コンテストは、昨年のいつ頃にどういった経緯で開催することになったのでしょうか。


番匠カンナさんこのコンテストはxRArchiというグループで開催しました。


――xRArchiはどういったグループなのでしょうか。


番匠カンナさん建築系の技術者の松本ちなつさん(@matsumotobim)というが2018年の夏頃に作ったコミュニティです。秋頃からdiscordサーバーをちなつさんと私を中心に運営していて、現在は50人ぐらい参加者がいます。


・番匠カンナさんのアバターが身に着けているバッジ。上が建築系コミュニティの「xRArchi」
そして下がVRな人たちがためになる知識をお話したりするコミュニティ「VRアカデミア」のものです。


――xRArchiの活動の一環として、番匠カンナさんを中心に第0回VR建築コンテストを開催したんですね。


番匠カンナさん私と松本ちなつさんの最初のTwitter上でのやり取りが、VR空間でコンペをやりたいよね、という話題だったんです。もともとは現実の建築コンペも今後VRを使ったものになればいいよね、というような。


――最初のVisionnaireの話のようですね。スペースや費用が大きく軽減されますし、まさにエティエンヌ・ルイ・ブーレーのドローイングのようなアイデアも形にして体験できます。


番匠カンナさんそうです。そういう話をしていたので、じゃあそれに近いことをまずやってみよう、ということでVRChat上で開催することになりました。


――ワールドに入るとまずは空に浮いた島の会場を遠くから眺められる場所にでます。そして遠くに見える木を「掴む」と木の根元まで一気にテレポートするという、とてもVRらしい面白さがある入場演出ですね。




・はるか遠くに見える木をクリックするとそこへ一瞬で飛ぶのは、とても直感的で面白さと気持ちよさがあります。


――このコンテスト会場の中央に大きな木があるデザインはどういった意図なんでしょうか。


番匠カンナさん特に意味はなくて、私がアイデアをスケッチしてメンバーにどうでしょうと見せたら、次の日くらいに会場が出来てました(笑)


――ジェバンニが一晩でやってくれました(笑)


番匠カンナさんこのコンテストでは私は制作のほうはあまりやっていなくて、配信や広報、審査員をやっていましたので会場制作はほかのメンバーが担当してくれたんですね。まず、最初の入り口のところにポスターがあったじゃないですか。スケッチを見て1日であの綺麗なポスターを作ってくれたんですよ。よくよく聞くと、ポスターの絵を3Dモデルから作っていますと。3Dモデルあるの?じゃあもうワールド出来たじゃん、となって(笑)




・とかくVRの世界の人達のスピード感は速い、速すぎです。


――ポスターの絵といまこの場所、同じものなんですね。そんな会場に60ほどの作品が集まり、配置されたんですね。


番匠カンナさんはい、ありがたいことに。20作品くればいいかな、くらいに考えていたんですよ。30作品くらいいくと見栄えがいいよね、と言っていたら倍くらい応募が来ました。


――どういった方からの応募だったのでしょうか。


番匠カンナさんVRChatをやっている人と、建築をやっている人が半々くらいだったんですよ。


――両方の界隈から応募があったんですね。


番匠カンナさんVRChatユーザーはすごいワールドをいっぱい作れるじゃないですか。対して建築側の人はゲームエンジンを触ったことがないところからスタートになるんです。そこでこのコンテストをトライしてもらう場所にしようとして、ホームページにチュートリアルを載せたりもしました。


――建築界隈の人にVRへ来てもらい、VRに挑戦してもらいたいという意図もあったんですね。そこで「第0回」と題しているんですか。


番匠カンナさんそうですね。



・このコンテストの開催は、VRChatの制作者の作品発表の場としてだけでなく、建築系の人達をVRへ誘うという意図があったという。


――新たにVRを始めてもらいたいというこのコンテストのほかにも、VRで制作活動をされている方は知識や技術を公開して他の人にもVRをもっと広げたいという方がとても多い印象ですよね。


番匠カンナさんそうですねえ、いやあそれは本当、建築にいるとまったくそういうのがないので。


――建築業界だと違うんですね。


番匠カンナさんはい、ないです。情報はやはりあまり公開できなかったりもするので。お互い囲い込むというか。


――そうですよね。企業秘密だったり飯のタネだったりしますよね。


番匠カンナさんほとんど言えないですからね。建物のデータとかも他人には見せらないじゃないですか。この界隈に来て、プログラマーの方とか勉強会とかミートアップとか、もくもく会とか超するんですよ。そういうものは建築界隈にはなかったんですよ。


――エンジニア系の方はそういう文化がありますね。


番匠カンナさんVRもそういう文化っぽいですね。そういう技術者の方がVR界隈は多いですし。


――あとは純粋に、自分が作って楽しいので、ほかの人が作ったものも見たい、という声をよく聞きます。一人で自己満足よりもどんどん広がって、新しいものの萌芽の時に立ち会っている感じがあります。


番匠カンナさん遊びですからね。今、楽しい時期だと思います。


――2018年に一気にVR創作が盛り上がりました。交流が盛んになったり、自作3Dデータの販売が流行したり。


番匠カンナさん2019年は何が起きるのか。もしかしたらVRChatが存在していないかもしれない。


――VRChatはアーリーアクセスですし、新たに凄い求心力を持ったプラットフォームの登場もないとは言えませんね。


■バーチャルマーケット2会場設計を担当

――そして3月8日から開催のバーチャルマーケット2の会場の一区画の設計を担当されています。


番匠カンナさんはい。ありがたいことに。




――これは主催からオファーがかかったのでしょうか。


番匠カンナさんはい、動く城のフィオさん(@phio_alchemist)からです。なんだか推してくれたのはモスコミュールおじさん(@Moscow_ojisan)らしいんです。


――モスコミュールさんは、第1回バーチャルマーケットの会場設計を担当されていた方ですね。モスコミュールさんとは面識があっての推薦だったんですか。


番匠カンナさんいえ、面識はないんですよ。ただ、第1回の会場を周った時に、すごく面白かったので建築の視点でからめてツイートしたら、リプライで会話したことがあるのでそれを覚えていてくれたのかな。


――これまでのスピード感からすると、このバーチャルマーケット2のお話が来た時も即座に・・・


番匠カンナさんはいやりまーす、と(笑)


――即断!


番匠カンナさんでもこれは誰も断らないんじゃないかと。こんな機会はないです。


――第1回は80ブースほどが出展され、今回は400強のブースが出展されます。そこで会場が分割されることになったわけですが、番匠カンナさんが設計されるバーチャルミュージアムにはどれくらいのブースが設置されるのでしょうか。


番匠カンナさん私の所がブース配置が一番多くて、120ブースくらいが設置されます。


――準備が大変だと思いますが、楽しみなイベントですね。


番匠カンナさんいやあ、これは凄いことになると思いますよ。


・バーチャルマーケット2は、出展ブースはもちろん、会場のデザインも見どころです。
バーチャルマーケット運営の公式ページでは、デスクトップモードでのVRChatの始め方の解説をしています。VRシステムは必須ではありません。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にVRChatを始めてみてください。


■番匠カンナ建築設計事務所

――番匠さんのこれまでの活動と、直近に控えているイベントのお話をお聞かせいただきました。さらにその先の予定や、やっていきたいことなどはなにかあるのでしょうか。


番匠カンナさんタイミング的にまだ詳しくは話せないですけれど、私は今、去年の秋にフリーになったんです。建築家のキャリアというのは、まずどこかに勤めて、そのあと独立して自分の事務所を持つ、というのが一般的なルートなんですね。なので私も自分の事務所を作ろうと思っています。


――おおお!


番匠カンナさんそれを、単純に建築設計事務所ではなくて、リアルとバーチャル両方の設計を対象にしたデザインチームを作ろうかなと。そういう大きな野望があります。


――凄いですね! その構想だけで求人になりそうですね。VR技術者やVRに興味を持っている建築士がコンタクトをとってきそうですね。


番匠カンナさんどうなんですかね。でも今後増えてくるはずです。VR空間を作りたいという需要が。そういうのに応えられたらなあという。


――ここ最近、VRに興味を持ったことから得た知識や技能で、VRやIT関連に就職するという話は聞くようになりましたが、それとはまた一線を画していますね。ご自身の本職にVRを組み込むというのは。


番匠カンナさん上手くミックスできるか。ちょっと考えます。


――今後のVRでの活動をお尋ねしたら、VRとリアルを繋ぐ答えが返ってくるとは本当に驚きました!


・科学シンポジウムの時には「番匠カンナ」名義での登壇でしたが、リアルの建築設計事務所はどういった名義で活動されるのか気になります。


■マルチなVRのための空間建築

――個人的には、VRの制作というと現実では出来ないことをするもの、というイメージだったんです。
ですがこのワールドの入り口に設置されている審査員長総評の
「VR建築ってなんだろう。その場所、その家の中で人々が会話をしたり楽しい思い出を作れるということは間違いないこと」
という記述がすごく印象深いです。これは一番最初に見たVRChatの、人がいてこその空間というところから来ているんですね。


番匠カンナさんそうですね。私はマルチじゃないVRは全然興味がないです。


――なるほど。人がいてこその空間。マルチだからこそ生きていて楽しい。その楽しさの一助になるのが空間建築なんですね。


番匠カンナさんはい。


――長いお時間をいただき、とても面白いお話をありがとうございました!


番匠カンナさんはい、ありがとうございました~



・マルチじゃないVRには興味がない。番匠カンナさんの、交流があってこその空間設計という考え方や、VRアカデミアやxRArchiの方たちとの技術交流、コラボ活動の素晴らしさが込められた一言でした。



【Virtual Beingsインタビューシリーズ】

#01:月刊エモいワールド制作者 落雷さん(rakurai5)

#02:合同VR作品展示ワールド「Beyond Reality」

#03:VR作品展主催者 ヨツミフレームさん(y23586)

#04:Voxelモデラー・Shaderクリエイター Karasuma-Kuroさん(Karasuma-Kuro)

#06:VRイベントクリエイター カズユキ ハルノさん(カズユキ)

#07:VRライブ奏者 らくとあいすさん(RAKU_PHYS)





マル知る!では今後もVRに関わる方々のインタビューを行っていきたいと考えています。

・VRChat用のアバター、ワールドの創作活動を行っている方。
・VRChat上でイベントを企画開催している方、VRChat初心者への案内を行っている方。
・VRに関する技術、機材を扱われている、研究されている企業や団体。


マル知る!のインタビューをお受けしていただけるという方がいらっしゃいましたら

マル知る!Twitterアカウント:@marushiru_com へダイレクトメールにて

または

こちらのマル知る!お問合せフォームより

ご連絡いただけますようよろしくお願いいたします。



この記事を書いたライターは?

bukkey

マル知る!編集部員。現在はVR関連に興味津々。

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