【Virtual Beingsインタビュー#06】VRイベントクリエイター カズユキ ハルノさん(カズユキ)



2018年、日本ではVTuberのブームと共鳴しながらVR関連の創作活動が活発化しました。

ゲームエンジンUnityにより自由度の高い創作ができるVRChatを中心とした盛り上がりにより、VR上での作品発表や多くのコミュニティの発足、自作の3Dモデルの販売。様々な形で活動するVR表現者が現れ続けています。


そのなかで「VRイベントクリエイター」と少し変わった肩書で活動をされているのが今回取材に応じていただけたカズユキ ハルノさんです。


ご自身で「アルテマ音楽祭」を始めとしたVRイベントを主催しつつ、VR上での創作発表活動を、イベント・興行・創作者への還元を行える形へと進めていくことはできないのかを模索するカズユキ ハルノさんのインタビューをご紹介いたします。



カズユキ ハルノさん

twitter:@kazuyuki_haruno

VRChat:カズユキ

アルテマ音楽祭公式サイトはこちら


■インタビュー その前に「アルテマ音楽祭」のご紹介■

カズユキ ハルノさんの主催にて2019年1月19日に開催された「アルテマ音楽祭」

バーチャル空間の音楽ライブの可能性を追及した音楽フェスとして企画され、多数の出演者による素晴らしいパフォーマンスと会場運営技術スタッフによる見事なステージ演出で大きな反響を生んだイベントです。


アルテマ音楽祭の出演者のひとり、VTuber おきゅたんbotさん(@OculusTan)がご自身のYouTubeチャンネル「おきゅたんbot / VRすきま動画」にてアルテマ音楽祭のアーカイブ動画を掲載されています。




百聞は一見に如かず。
まずアーカイブ動画を見てから、インタビューを読んでカズユキ ハルノさんの考えを確認する。
またはインタビューを読んでから、アーカイブ動画を見てカズユキ ハルノさんが語った考えがどう形になったか感じる。
どちらも面白いです。ぜひおきゅたんbotさんのアルテマ音楽祭のアーカイブ動画も合わせてご視聴ください。



■アルテマ音楽祭会場ワールド



――初めまして。1月のアルテマ音楽祭の時からとても気になっていました。今回、アバターを作っていただいたNEFCOさん(@gaku2_sigehiro)を通じてインタビューの機会を設けていただき、ありがとうございます。


カズユキ ハルノさんこちらこそありがとうございます。以前にインタビューされた落雷さん(@rakurai5)も友達なんです。


――なんと、ご縁ですね。後ろにいらっしゃるのは、下平公麻呂さん(@virtual_maro)ですか。


カズユキ ハルノさん麻呂さんです。イベント運営メンバーなので来てもらっています。ちょっと今外しているようなのでまた後でご紹介します。


――こちらがアルテマ音楽祭が行われたワールドなんですね。


カズユキ ハルノさんはい。この上が会場になっています。


――長いスロープを上がって会場に入っていく。フェス感がありますね。


・宇宙空間の中にかなりの高さがある会場がうかんでいます。




・ステージの上には大きな球体パーティクルが。


カズユキ ハルノさん会場の観客席側に繋がっています。こちらがステージ上です。そうですね、照明がちょっと暗いので明るくしましょう。


――なるほど、ステージ演出用に照明をコントロールできるようになっているんですね。


カズユキ ハルノさん舞台裏をお見せしますね。


――ワールドの入り口から、会場へ向かうスロープと逆方向にいわばスタッフ通用口があるんですね。



・専用のポイントから移動すると、会場照明や舞台のパターンを切り替えるスイッチが揃った舞台裏へ。ステージの上空に存在しステージを一望できます。


カズユキ ハルノさんここがステージの上空に設置されている舞台裏です。ここでステージを確認しながら、スイッチで舞台演出をコントロールできます。


――まさにリアルタイムに、ワールドの裏側でスタッフの方が操作していたんですね。



・スイッチを操作することで、照明や舞台の設定などを変更できます。


カズユキ ハルノさんはい。またここだとステージや観客席と距離があるので、スタッフが打合せしていてもその声が観客には聞こえないようになっています。


――状況が目視できる場所で、ステージ演出が遠隔操作でき、スタッフも会話できるとリアルなイベント会場作りと同じ感覚ですね。


カズユキ ハルノさんそしてステージ操作のスイッチとは別に、後ろにひとつボックスがあるんですがこれをクリックしてみてください。





・舞台裏から舞台袖に移動できるようなっているため、ここが出演者の控え室としても機能します。


――舞台袖に移動しました。なるほど、出演者の控え室しても機能しているんですね。あちらで待機していて、これで舞台袖から登場できると。


カズユキ ハルノさん先ほどのスイッチでステージの床なども切り替わり、マイクスタンドも出現します。照明が影も作るので臨場感がでるかなと。


■アバターに組み込まれたステージ演出

――はじめまして、マル知る!と申します。


下平公麻呂さんどうも、麻呂です。


――以前から、Twitterでパリピ砲と題したパーティクル演出の作品を発表されているのは存じていました。


カズユキ ハルノさん有名人だ(笑)



・アルテマ音楽祭のスタッフの一人だった下平公麻呂さんも同席していただけました。


――Webで見かけた人と実際に会えると、嬉しいです。本当に居たんだ!、というか。


下平公麻呂さん本当にいたんだ(笑)いますよ~(笑)


カズユキ ハルノさん麻呂さんはアルテマ音楽祭では、演出の制作陣で参加してもらいました。


下平公麻呂さんその時の演出を今出すことも出来ますよ。


――それはすごいです。ではお言葉に甘えて拝見させていただければ!よろしくお願いいたします。



・観客席の高くなっている席へ下平公麻呂さんといっしょに移動し、ステージの演出を見せていただきます。


カズユキ ハルノさんアーティストがいないので不完全ですが、上の観客席からステージ演出を見てください。


下平公麻呂さんパーティクルを使うのでセーフティの設定を確認してもらって。問題ないようなら、出しますよ~





・ステージが暗転後、楽曲が流れ出し、光だす柱と現れるスピーカーのような球体。そして楽曲の進行に合わせて、照明や背景が眩く変化していきます。


――すごい、すごいですね!


下平公麻呂さんこれはリハーサルを行う3日前に楽曲をもらって、そこから構想から制作までをやったんですよ。


――3日ですか、この情報量の演出を3日で構想から。


下平公麻呂さん3日でしたねえ。


――今の演出は、ステージ照明のコントロールと違って、スイッチが見当たらなかったのですが。


下平公麻呂さんこの演出は私のアバターに入っています。


カズユキ ハルノさんワールドの座標などを計算して、演出の位置がぴったり合うものをアバターで作ったんです。


――麻呂さんが演出の含まれたアバターで操作すると、演出が始まるようになっていると。


下平公麻呂さんそうです。曲まで含めた演出全部が入っています。パッケージで渡すより、作ってこちらから出してしまったほうが早いということもあるので。


――VRChatの仕様上、ユーザーがアップロードできるのはワールドとアバターしかないので、アバターに組み込むというちょっと力技的な実装になる点も仕方ないという感じでしょうか。


下平公麻呂さんそうですそうです。


・「カズユキ君、これ3日だったよね?」「そうっすねえ~」


■2ヵ月clusterでアバター制作を行ってからVRChatへ

――アルテマ音楽祭の企画や構想はいつ頃から始まったのでしょうか。


カズユキ ハルノさん企画自体は2018年の11月ぐらいです。まずアルテマ音楽祭の前に「VRアートイベント」というものをやっていました。それが終わった後にVRアートイベントのメンバーだった、らくとあいすさん(@rakuraku_vtube)と僕が次は軽い感じのイベントがやりたいね、という話をしまして。


――軽い感じですか?


カズユキ ハルノさんもっと規模が小さいはずだったんですけれど。それが2018年11月ごろ。そして2019年1月に開催となりました。


――2ヵ月ほどでアルテマ音楽祭開催に至ったんですか。


カズユキ ハルノさんさすがに怒られましたけれど。スケジュールが厳しすぎるって(笑)


――ではさらにカズユキ ハルノさんの活動の経緯をお聞きかせください。まずVRにはいつ頃触れられたのでしょうか。


カズユキ ハルノさん2018年の6月ぐらいでしょうか。まず4月ごろにTwitterなどでVRChatを知り、楽しそうだと始めてみたいんです。そしてVRChat上で色々な人のアバター芸を見せていただいて、面白い、これからVRの時代が来るなと思って。本格的になにかを作り始めたのは6月くらいからになります。Unityに触ったのが6月ですので。


――するとVRでの創作を始めてからアルテマ音楽祭まで8ヵ月ですか。かなり速い展開ですが、VRを触られる前から3Dモデリングなどの知識はお持ちだったんですか。


カズユキ ハルノさんまったくないです。


――プログラマーとしての知識や、イベンターとしての経験などは。


カズユキ ハルノさんそれもないんです。元々は漫画家志望でした。担当者が付いたこともあったのですが、芽が出きらず一旦漫画からは離れて。その後WEBサイト作成系の仕事をしていたのですが、でも自分は別にWebサイトのプロになりたい訳じゃないなと思い、またクリエイトなことを始めようとイラストや漫画の自費出版をしていました。その時にVRに出会ったんですね。


――VRを見て、この先これは表現として来るぞと。


カズユキ ハルノさん僕は創作で、ロボットのイラストを描いているんですよ。画集を販売したりなど。で、ロボットって等身大で見たいじゃないですか。


――確かに見たいですよねえ。


カズユキ ハルノさん等身大ガンダムとか、個人では作れないじゃないですか。それがVRなら出来るのでやってみようと。そしてこれは表現としてもっともっと色々なことが出来るなと面白さにハマって進んできた感じですね。


――そうしてVRでの創作を始められて、まずはなにを作られたのでしょうか。


カズユキ ハルノさん4月にVRChatをやってみて、一旦VRChatではなくcluster(クラスター)という別のVRサービスをやっていました。


――どういった理由でclusterだったのでしょうか。


カズユキ ハルノさん僕の知人にゲーム制作のプロ3Dモデラーの方がいて、Blenderで簡単なアバターを作り方を教える授業のような企画をBlender上で2ヵ月くらいやっていたんです。そこでBlenderの基礎知識やアバターの作り方を学びました。そしてアバターが出来たのでVRChatに戻って来て、ということをしていたので、最初に作ったものはアバターということになります。



・こちらがカズユキ ハルノさんが最初に自作されたアバター。


■アルテマ音楽祭の前身、VRアートイベントの開催

――4月から2ヵ月アバターの作り方を学んでVRChatに戻ってきたのが6月。そしてVRChatではどういった活動をなさったのでしょうか。


カズユキ ハルノさんVRアートイベントの1回目を7月ぐらいにたしか開催したはずです。


――VRCnatに来て1ヵ月後にはもうイベント開催ですか。


カズユキ ハルノさん最初はすごく小さい規模で、二人ぐらいでやっていました。7月に1回目、そして9月に2回目を開催して。その2回目あたりから知る人ぞ知るといった評判になり、タナベさん(@sobatang1)を始めとしたVRChatで有名な方たちと出会えたんですね。


――下平公麻呂さんとはいつ頃出会われたのでしょうか。


カズユキ ハルノさん麻呂さんとは10月に開催した3回目のVRアートイベントからですね。2回目までは二人でやっていたのですが、3回目から大人数になったんです。



・VRアートイベントが大所帯になった3回目から下平公麻呂さんもjoin。


――VRアートイベント、月一くらいのペースで開催なさっていたんですね。


カズユキ ハルノさんそこは意識的にやっていました。今まだ黎明期の時に形を残しておかないとチャンスはないな、と思っていて。そこは無理しやった感じはありますね。ポジションを作っちゃおうと。


■バーチャルマーケット2からのオファー

――そしてVRアートイベント3回目の後に、アルテマ音楽祭の構想が出てきて、2019年1月に開催しこれまで以上にさらに大きな反響を呼びました。さらに3月8日から開催される「バーチャルマーケット2」でもアルテマ音楽祭を冠したイベントが行われると発表されています。


カズユキ ハルノさんこれはバーチャルマーケットのワールド内で楽しめる仕掛けです。主催の動く城のフィオさん(@phio_alchemis)から依頼されて、アルテマ音楽祭としてなにか出し物をやってもらえると嬉しいと言われて、じゃあやってみようということで。麻呂さんと、らくとあいすさんに作ってもらいました。




――会場内で「音」を集めるスタンプラリー的なものと公式Twitterで説明されています。


カズユキ ハルノさん音の仕掛けがいくつかあり、それをクリアしていくと、らくとあいすさんの曲と麻呂さんの演出によるライブが見られるというものです。


――それは楽しそうです。VRの会場を探しまわるというのが、VR上の会場で開催されている意味と面白さを増して、単なるWeb通販ではなく本当にバーチャルマーケット、という感覚に繋がると思います。私も探し回りますね。


カズユキ ハルノさんはい、ぜひ探してみてください。


■すでに夏頃までイベントの予定が

――直近でカズユキ ハルノさんが関わっているイベントはこのバーチャルマーケット2ですが、さらにその先の予定もすでにあるのでしょうか。


カズユキ ハルノさんむしろもう決まりすぎているという状態です(笑)


――タイミング的にまだ公開できないものも多いと思いますが、現段階でお聞かせいただけるものなどは?


カズユキ ハルノさんお話しできるものですと、アルテマ音楽祭の2回目を6月7日あたりで予定しています。さらに同時にVRアートイベントも進めているのですが、そちらはまだ日程までは。


――アルテマ音楽祭2回目は6月ですね、楽しみですね!


カズユキ ハルノさんアルテマ音楽祭の後もイベントに誘われたりはしているので、夏くらいまでは予定が埋まっていますね。


――この忙しさ、先ほどおっしゃられたようにVRが盛り上がっているときにイベンターとして打って出よう、というアクションが軌道に乗ったという形ですね。


カズユキ ハルノさんそうですね。


■VRをさらに一般層へも広げる視点

――VRイベントクリエイターという肩書で活動されて、実績を重ねられているカズユキ ハルノさんは、その経験からTwitterでVRイベントについてのご自身の見解などを掲載されています。


カズユキ ハルノさんはい。


――その中には、VR上でのイベントや創作活動が今とても盛り上がっていますが、同人的な無償活動ではいずれ限界がくるのでは、といった見解もあり、これは私も個人的に同意できて気になっている点です。


――VRクリエイターの活動をどうマネタイズするか。例えば2018年から、3Dモデラーの一時創作の販売がpixivのショップサービズBOOTHを中心に流行し始めました。またVR上での創作活動をポートフォリオにしてIT関連やゲームクリエイト関連への就職という流れも見受けられます。ですがこれは副次的なもので、VR上の活動やイベントそのものが収益化は、あり得るでしょうか。


カズユキ ハルノさんそうですね。VR上の活動から就職や転職に繋がるVR転職、ありますね。ただ、そうして企業に就職しても、今VRでやっているようなことが仕事になるわけでなく、Unityのエンジニアになるということです。VR上でのイベントをマネタイズしている人はまだほとんどいないのが現状です。僕は今そこをチャレンジしています。


―――VR上の活動となると、Vtuberともまた違うんですよね。ただ、一部のVtuberはclusterでライブ開催なども行っていますが、こういった方面はどうでしょうか。


カズユキ ハルノさんVR上での収益化となると、プラットフォーム側のシステムの問題もあります。例えば、ambrさんなど日本のVRプラットフォームを作ろうという会社もあって、クリエイターの方たちがVRの中でどうやってお金を稼げるんだろう、といったこと考えているようです。ただ、日本では正直まだVR企業で黒字になっているところはほとんどないと思うんですよ。


――ここは難しいところですよね。


カズユキ ハルノさんそこで、僕はVRをもっと一般層に広げないとダメだという話をしています。このVRChatの中にいるとすごい人が大勢いるので錯覚してしまいがちなんですが、ここにいるのはまだクリエイターというごく一部の人間だけなんです。


――そうですね、慣れというのは恐ろしいもので、VRChat上に自分でアバターをアップロードする、ということも普通の人からしたらとてもハードルが高いんですよね。必然、ここにいる人は大きな観点からみたらものすごいマイノリティなんですよね。VRの中にいると、すごく熱く盛り上がっているので忘れてしまうのですが。


カズユキ ハルノさんそうなんです、まだ狭く人が少ないんです。だからクリエイターの数以上に、もっとクリエイターではない、ただのお客さんといった人も必要なんです。純粋な受け手ですね。そうでないと身内同士の狭い世界でお金を回している感じになってしまいます。


――世界の母数が増えないと、商売や経済という観点では苦しいということですね。


カズユキ ハルノさんただこういったことをTwitterで発言すると、誤解を受けてしまうことも多いのですが。


――それも難しいところですね。クリエイターの気質があり、VRの先端を追いかけてVRの中にすでにいる人がいる場所から見えるVRの世界は、今ものすごく活発に交流や創作が行われていて熱く面白く素晴らしい。絶対にそう見えますから。カズユキ ハルノさんは中から見るVR世界と、また違った場所から見る視点のひとつを提案しているだけなのに、齟齬を感じてしまい、誤解が生まれてしまうのかもしれません。


■VRを「新しいもの」から「当たり前」のものへ変えていく

――受け手として、お客としてもっと多くの一般層にもVRに興味を持ってもらわなければならないとお考えとのことですが、ではそのためのアプローチはどういったことをお考えでしょうか。


カズユキ ハルノさんこのアルテマ音楽祭も、一般層にVRに興味を持ってもらうということのひとつなんですよ。音楽というのはひとつのポイントになるんじゃないかと思っています。


――音楽がポイントになる。


カズユキ ハルノさん例えば、今人気の米津玄師さん。彼も元々はボカロPの方です。ボカロ曲は最初の頃はオタクのコンテンツでした。それが最近は中高生も普通にボカロ曲を聴いたりしています。オタク寄りではあるけれども以前よりはオタクオタクしていなくて普通に曲として聴くようになりました。


――そうですね、ボカロPと呼ばれるクリエイター同士が作品を作り交流し、オタクな人が受け手として存在していた、という初期の頃と状況は変わっています。


カズユキ ハルノさん音楽は、いい音楽であればそれが誰でも、例えばVtuberでも聴いている側からしたら関係ないと思うんですよ。


――なるほど。


カズユキ ハルノさん僕がVR上で開催した音楽イベントの名前は「アルテマ音楽祭」です。そして僕のほかにもVR上でイベントを企画する人がいて、色々なイベントが開催されているのですが、その多くが「VR〇〇」といった題名を付けることが多いんですね。例えば、バーチャルマーケットもそうですね。


――いわれてみれば、たしかにVRを冠するVRイベントは多い気がします。


カズユキ ハルノさんけれど、それは例えばアニメ映画のことをアニメ映画アニメというようなものです。「アニメ映画:君の名は」とわざわざ題したりしませんよね。VRが広く一般にも広まる当たり前になるには、VRと付けずに外さなければならないと思うんです。


――VRが誰もが使う当たり前になったなら、VRをわざわざVRと言わない。


カズユキ ハルノさんVRが広まるためには、VRをウリにしちゃいけないと思うんです。だから「“VRならでは”というのをやめよう」と僕は言っていたりするんです。先ほどのアニメ映画の例えですと「アニメならではの良さがある、君の名は」というような宣伝はしないですよね。もっとコンテンツの内容で宣伝してきます。君の名はだったら、主人公ふたりが入れ替わる、とかですよね。VRも早くそういう風にならなければと思うんです。けれどこれもTwitterで誤解されるんですが・・・(笑)


――これも誤解されてしまうのですか。


カズユキ ハルノさん僕はVRのことが嫌いだとか、VRのことを考えていないわけではなくて、もっともっと考えたうえで発言しているのですが、なかなか。


――VRを「当たり前の手段」にしなければならない。VRを「目新しさ」だけで推すのはまずいのでは、という提案なんですよね。


カズユキ ハルノさんはい。もっと「当たり前」になるスピードを上げよう、その一手としてイベントのタイトルはVRを外してみよう、という具体案の提示です。だから「アルテマ音楽祭」にはVRと付けていないんです。ただの音楽イベントなんですよと。



・アルテマ音楽祭の公式ホームページは非常にシンプル。キャッチコピーは「究極の音楽祭を目指して」「アルテマ音楽祭とは=アルテマ(究極)の音楽の祭」
VRという文言はホームページ上に登場しません。


――いい意味で“ただの”音楽イベント。


カズユキ ハルノさんVRは関係なく、音楽ファンの人達が見ても単純にかっこいい音楽イベント、ということをひとつのキーワードとして作っています。


――VRは手法手段であって、それは音楽イベントの価値の本質ではないと。


カズユキ ハルノさん実際に前回のアルテマ音楽祭が終わった後に、Twitterなどでみなさんが拡散してくれたおかげで、VRとは関係ない音楽界隈の人からも声をかけていただいたりしています。


――それはまさに「VRイベント(音楽イベントをする)」ではなく「音楽イベント(VRを使う)」という展開を行ったから、ですね。


カズユキ ハルノさんそうですね、意図したことが少しづつ届いてきたのかなと感じています。


――とてもいい感触ですね。


カズユキ ハルノさんアルテマ音楽祭の出演者も、身内とかではなく単純に良い歌やパフォーマンスをされている人を中心に集めたというのもあるんですね。それはVtuberが歌っているイベント、とかではなく、単純に良い曲を聞かせる、良い体験をさせるイベントにしようという観点で、それが出来る出演者を選んでいます。


――Vtuberのイベント、と誤解して捉えられたくはないわけですね。


カズユキ ハルノさんイベントを開催すると、つい仲の良い人を出演させてしまって、悪い身内感がでてしまうということは陥りがちなんですね。アルテマ音楽祭はは実力勝負みたいな感じで出演者を選びました。


――よくない身内感というものは、ありますねVRに限らず。


カズユキ ハルノさんただこういう僕のばっさりした発言が、言葉足らずで尖っている風に聞こえてしまい反発を受けることも多いんですね


――難しいですね。


カズユキ ハルノさんそれでもTwitterで考えを発信し続けて、同時にアルテマ音楽祭などの行動をしています。それが刺さる方には刺さってきていて、VRChatで会った時や、リアルのミートアップで知り合った時などに、僕の考えや、やっていることを面白いと言ってくれる人もいます。


――理解者も増えてきている。


カズユキ ハルノさんそういう理解者はどういう人かというと、VRの世界でクリエイターとして生きていこうとする時に、今の状況に問題意識を持っている人が中心になっていて。自分と同じ問題意識を持っている人が共感し始めてくれているのはありがたいなと思っています。


■イベント主催としての責任

――VRをもっと広い世界にするために、VRを目新しいものではなく、当たり前のものにしていくカズユキ ハルノさんのお考えなんですが、ではアルテマ音楽祭、音楽イベント、音楽、ということも音楽を上手く使えばならば広い一般層に訴求できるパワーがあるだろうという打算というかクレバーな判断というか、そういう観点はあるのでしょうか。


カズユキ ハルノさんそれも、ひとつ、ではあります。おっしゃられたようにクレバーな判断で音楽というのもありますが、それだけではないです。僕のイベントには色々なテーマを抱えてやっています。アルテマ音楽祭の構想として、第3回VRアートイベントの時にメンバーのらくとあいすさんが、VR楽器というものを発明したんですね。これがすごくよかったので、次は音楽イベントという発案にも繋がっていますし、単純にVR楽器面白い!というのもありますし、色々なテーマが含まれています。1つのイベントが1つのテーマで出来ているのではなく、色々なことを含んでいるので。またそれが分かりにくいという人もいたりするのですが、色々なプラスの面を計算してやっています。



・YouTubeチャンネル:おきゅたんbot / VRすきま動画 Live#97【アルテマ音楽祭】ここに生まれる音のカタチ より引用


――イベントの企画から実行において様々なことを考えられているのですね。


カズユキ ハルノさん僕は主催なので、関わってくれたメンバーに対しての責任があります。色々なことを考えながら動いて、道を作っていかなければならないと思っています。


――カズユキ ハルノさんもVRの出会いは、多くの人と同じくこれは新しくて面白いぞ、から始まりました。しかしここからが人それぞれの資質の面白さといいますか、カズユキ ハルノさんはVRは自己満足で終わらせるものじゃないぞ、もっと広がっていくものであり、しかし問題点もあり、それが自分には見えているので行動を起こし、そうした起こったことに対しての責任感を持ってさらに次に行こうとなさっているんですね。


カズユキ ハルノさん最初からそこまで強く意識していたわけではないんですけれど、第3回VRアートイベントの時に3つのワールドを使ってイベントを行うというものだったんですね。


――それは大がかりな構成ですね。


カズユキ ハルノさん3つのワールドを作るということは、3つイベントを作るようなものです。それを1つのイベントのためにやったものですからすごく大変だったんですね。麻呂さんを始めとする主要メンバーの人達にすごい負担をかけてしまったんです。


――3つワールドを作るだけでも大変で、それを1つに連動させるとなると相当な作業になりそうですね。


カズユキ ハルノさん今は麻呂さん達主要メンバーとは絆のできた仲間なんですが、その時はまだ初対面の関係だったんですよ。それでも快く面白そうだから協力するよと集まってくれて。そして彼らが本職くらいに頑張ってくれて、ものすごくいいイベントになったんですよ。


――すごいですね。


カズユキ ハルノさんそうして終わった後に、ここまでやってくれた人達に対して、はいありがとうございました、さようなら、というのは無責任だなと思ったんですよ。これはちゃんと還元しなければならないなと。そして面白かったんですよ。みんなに感動体験を与えられて、自分自身も感動して。できることならこういうイベントをもっともっと作っていきたいなと。


――そこまで思えるのは本当にいいイベントだったんですね。


カズユキ ハルノさんでももっとイベントをやろうと考えるならば、還元できる仕組みをちゃんと作らないと続かないなと。実はVRアートイベントの時も収益化しようかという話はあったのですが、色々なタイミングで先送りにしたんですね。ですが終わったあとにみんなに対しての責任をちゃんと考えた時に、もっと還元できる仕組みを作らないとと思いましたね。


――イベントをもっと続けるために、そして主催の責任のひとつとして、参加者への還元ですね。


カズユキ ハルノさんアルテマ音楽祭の時はクラウドファンディングを行い収益化にチャレンジしてみました。


■リアルピラミッドでイベントを行うという夢 

――カズユキ ハルノさんは、誤解されるがあっても、ご自身の感じている現在のVR業界の懸念点について発信しています。またイベント主催として、ある種クリエイターではなく経営者のような思考で賛同してくれているクリエイターの方々へ責任感を持ち、収益化を模索しています。かなり大変なことも多いと思うのですが、それでもVRイベントクリエイターとして活動を続けている原動力はなんなのでしょうか。


カズユキ ハルノさんそうですね・・・


先ほどおっしゃられたように、イベントを行って観客の方に感動を届けられたこと、それを運営メンバーの方たちといっしょに成した達成感や一体感、などでしょうか。


カズユキ ハルノさんそれもひとつなんですけれど、僕はもっともっとその先にやりたいことが実はあって、これを聞いた人の半分はドン引きして、もう半分はすごく共感してくれるという話なんですが(笑)


――それはどういったことなんでしょうか。


カズユキ ハルノさんリアルピラミッドを作りたいという話をずっとしていて。


――ピラミッドですか、しかもVRではなくてリアルの?!


カズユキ ハルノさんそうです。僕のアートイベントでは象徴的にピラミッドのワールドがでてくるんです。


――たしかにこのアルテマ音楽祭の会場も、入り口からスロープを上がった頂上がステージのピラミッド型ですね。


カズユキ ハルノさんはい、ここもピラミッド型なんです。リアルピラミッドを作って、その上にみんなで集まって芸術イベントを行ったらエモくないかなって。


――それはVRではなくて、リアルでですか。


カズユキ ハルノさんリアルです。けれど、リアルだけではなくVRと繋げたりARも使ったりと。


――複合的にですか。


カズユキ ハルノさん将来、ARグラスがもっと小型化された時にそれをみんなで掛けて、ピラミッドの上で夜空を見上げるとアルテマ音楽祭のような光景をリアルでも見せられるじゃないですか。そしてVR上にもリアルのピラミッドと同じワールドを作って連動させれば、VRにいる人とリアルにいる人がARグラス越しに隣に並んだりできる。そうやって次元が重なって世界中の人がその時繋がれるイベントが出来るんじゃないかと考えているんです。


――所謂xRの全てを駆使して、垣根を越えて次元を超える。


カズユキ ハルノさんお前はどっち側にどこにいるんだ、みたいな。隣にいた人がARグラスを外したらいないとか。


――そのピラミッドをいつか実現するために、今、活動を続けている。それは途方もない夢ですね。


カズユキ ハルノさんなんでそれを作りたいのかというと、ひとつはその景色が綺麗だろうから見たい、という。もうひとつはずっと昔からなんとなく思っているんですけれど、世の中に対して、いいことをしたいじゃないですか。


――はい。


カズユキ ハルノさん僕は理不尽なこととかを見るのが嫌なんですよ。なにか世の中に対して自分ができることってなんだろう、と学生の頃に考えていた時期があって。その時に世の中を作っている仕組みみたいなものが、大きく分けると3つくらいあるなと思って。


――世の中を作っているものですか。


カズユキ ハルノさんそれが、政治と経済と心。僕はこの3つが世の中を成り立たせているんじゃないかと思っていまして。この中で僕ができることは心だと思って。心って教育だと思うんですよ。愛情とか優しさとかも教育だと思うんです。そういう心に作用するもので、僕が出来ることだとずっとクリエイトをやってきたので、クリエイト活動でなにかできないかとずっと思っているんです。漫画家になりたいと活動していた時もそれがあってやっていました。


――心に作用するクリエイト活動ですか。


カズユキ ハルノさんこれを、宗教色の無い宗教みたいなものを作りたい、とよく言っています。教義を作るとかではなく、神々しい体験、単純に綺麗なものを見せたいんです。


――特定の思想や帰属、美学とかではなく、もっと純粋に様々な多くの人にただただ感動が伝わる体験というようなもの、ということでしょうか。


カズユキ ハルノさんよく宇宙飛行士が宇宙から地球を見ると神々しい気持ちになって、ものの見方が変わった、なんて聞きますが、そういうイメージです。神々しい体験があった後に、人は優しくなったり自分を見つめなおしたりすると思うんですよ。


――なるほど。


カズユキ ハルノさん隣の人に優しくなろうとか。それって近いことはあるんですよ。いい映画を見た後とか多少そうことがあったりすると思うんです。でもそれは忘れちゃうんですよね。だからイベントを定期的にやることによって心の栄養を補充するというか、みんなもっと優しくなれるんじゃないかなと。


――心の栄養になるイベントを定期的に行う。


カズユキ ハルノさんだからこそ、広げなければならないんですよ。リアルピラミッドも広げるという意味もあって、VRだけだと絵空事になっちゃうんですよ。それはVR上のことだね、と。でもリアルに持ってくることで、リアルになるんですよ。作り物の中のいい話だよね、作り物だから、じゃなくなるんです。リアルにあるじゃん、それが、と。


――リアルと繋げることでリアルになる。


カズユキ ハルノさんリアルピラミッドを作る意味はそういうことです。そしてVRがあることで、リアルピラミッドに集まれない世界中の人とも繋がれる。僕はそこに可能性や夢を感じている。そこが一番です。そのための一歩一歩を今重ねているんです。


■夢と行動・実績と信頼・心と仲間

――凄く面白いお話です。カズユキ ハルノさんは今のVR業界をすごくクレバーに、クリエイターというより経営者のような目縁で見て、考えて、VR業界をもっと広げるための行動されているな、とお話を伺いながら感じていました。ですが、それなのにその行動の原動力は、自分が見たい、世の中に見せたい、という夢だという。行動と思考は経営者なのに、その根幹はアーティストというところが、とても凄いと思います。


カズユキ ハルノさんそうですね、イベントをやるのは個人の夢、エゴだと思います。でもそれをやるからには色んな人への責任がありますし、誰もがハッピーになってもらいたいと考えますし。根本的にはものすごくピュアな気持ちで動いているんです。でも、ただピュアなままでやっていたらダメということを、僕は社会に出て挫折もあって学んだんです。ピュアな心に対して、クレバーな思考は後天的に作ったものです。


――情熱と冷静のバランスといった感じですね。


カズユキ ハルノさんただピュアにリアルピラミッドできたらいいなあと言っているだけだったらそれは本当に夢なんです。けれどそれを現実的にどうすれば実現できるのか、それを考えて、そして行動する。すると最初はリアルピラミッド、なにを言ってるのこの人と笑われるんですけれど、実際に行動して、結果を少しずつでも出していくと周りの人の反応もちょっとずつ変わってきて。麻呂さんやらくとあいすさん達イベント運営のメンバーに話した時も、最初は何言ってるのという感じだったんですけれど、だんだんだんだん、リアルピラミッド出来そうじゃない?という反応に変わってきたんですね。


――行動と実績が説得力になっていったんですね。


カズユキ ハルノさん今はVR業界とは違う界隈の知人にも、夢に賛同していっしょにやろうと言ってくれている人もいるんですね。


――ある意味、すでにVRとリアルを超え始めていますね。


カズユキ ハルノさん大人になればなるほどつまらなくなってしまう人もいるけれど、大人になればなるほどピュアなことをしたい、という人もいるんですね。でもそういう人はどう行動したらいいかが分からなくて、だから僕の夢を面白がって賛同してくれています。


――それは響くと思います。イベントを一回だけやるのではなく、特定の集団や企業で何度もやるとなると、目の前のイベントのテーマだけでなく、なぜこの集団はイベントを繰り返し継続しているんだ、という理念や原点が必要になると私は考えています。それがないと決して続かないと思います。


カズユキ ハルノさんそうですね。


――カズユキ ハルノさんは、イベントの運営メンバーや賛同者の人達に、リアルピラミッドを実現するという揺るがない原点と最終地点を明示されているんです。これは周りの方にイベンターとして心強くて魅力的に映っているのだと私は思います。


カズユキ ハルノさんはい。物事を進めるのは99%は合理的に冷静にやらなければいけないんですが、でもどこかでそれでは通用しないピンチな場面が何度もでてくるはずなんです。その時に残り1%の心とかが繋がっていないと、終わるなと思っていて。


――まったくもってその通りだと思います。


カズユキ ハルノさん僕もこれまでイベントをやっていて、何回か修羅場の大変な時がありました。その時、今日は来ていないんですがメンバーの元怒さん(@gend_VRchat)という方が僕の悩みなどを聞いてくれて「余計なことを考えないでカズユキさんが最初にやりたいと思ったことをやってくれ。僕達が支えるから。頼ってくれよ」と言ってくれたんです。本当にありがたいです。そういう仲間がいるからこそ、出来ていることなんですね。


――素敵なチームですね。そういう風に支えてくれるメンバーが集まっているのは、カズユキ ハルノさんがビジョンとパワーを持っているからだと思います。


カズユキ ハルノさんいやあ、ありがたいですねえ。


――長くお時間をいただき、面白く熱いお話を聞かせていただき、ありがとうございました!


カズユキ ハルノさんこちらこそありがとうございました。またよろしければ取材してください!


・たまたまの偶然とのことですが、カズユキ ハルノさんが最初に作ったアバターにも三角形のデザインが含まれていました。
原点の夢であり、目標として実現するもの。言葉通りのモニュメントとして、ピラミッドはカズユキ ハルノさんと周りの方々の心の中にあるのだと感じました。




【Virtual Beingsインタビューシリーズ】

#01:月刊エモいワールド制作者 落雷さん(rakurai5)

#02:合同VR作品展示ワールド「Beyond Reality」

#03:VR作品展主催者 ヨツミフレームさん(y23586)

#04:Voxelモデラー・Shaderクリエイター Karasuma-Kuroさん(Karasuma-Kuro)

#05:VR建築家 番匠カンナさん(banjokanna)

#07:VRライブ奏者 らくとあいすさん(RAKU_PHYS





マル知る!では今後もVRに関わる方々のインタビューを行っていきたいと考えています。

・VRChat用のアバター、ワールドの創作活動を行っている方。
・VRChat上でイベントを企画開催している方、VRChat初心者への案内を行っている方。
・VRに関する技術、機材を扱われている、研究されている企業や団体。


マル知る!のインタビューをお受けしていただけるという方がいらっしゃいましたら

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